部下を「知っている」と思い込まない

2016.5.31

あなたは、部下について何を知っているでしょうか。

年齢、出身大学、どこに住んでいるか、家族構成など、知っていることはいくつもあるかもしれません。では、
彼らがどんな価値観をもっているか
ものごとを判断するときに何を重視しているか
上司に自分について何を知っておいてほしいと思っているか
将来の個人的なヴィジョン
などについては、どうでしょうか。

上記に述べたような情報を「知っている」ことが重要だというわけではありません。ただ、私たちは、ともすると自分のフィルターを通して相手を観察し、「この人は、こういう人だ」と決めつけてしまいがちです。しかし、コミュニケーションにおいて「知っている」と思い込んでしまうことほど、危険なことはありません。「知っている」と思ったとたん、それ以上コミュニケーションを交わす必要がなくなってしまうからです。

部下の能力や可能性を引き出したいと考えるのであれば、「知っている」というところから離れて、相手と関わることが重要です。部下についてのデータベースを自分の中に作っていくようなつもりで関わっていく。とはいっても、むやみに情報を集めても意味がありません。

たとえば、彼らのスキル、もっているタスク、健康状態や趣味などの個人的な情報、ヴィジョンなどのカテゴリーに分けて、情報を蓄積するといいでしょう。面談などで、こうしたことについて質問しても良いですが、普段なにげなく交わす会話からも、また、部下の行動を観察することからも情報は増えていきます。

そして、部下についてのデータベースは、作ってしまったら終わりというものではありません。彼らは毎日成長するし、健康状態も常に一定ではありません。データベースの厚みを増すことを意識し、それを更新していく。それだけで、自分の中で部下に対する関心が高まっていくのを感じるでしょう。

相手を変えることはできなくても、コミュニケーションを変えることはできます。相手についての情報をもてばもつほど、コミュニケーションのとり方の選択肢が増えるのです。

出典:伊藤守「部長講座」日経産業新聞


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