Student

受講生の声

松本 一成さん

コーチングが医療の質を向上させる

松本 一成 さん

社会医療法人財団 白十字会 佐世保中央病院 糖尿病センター センター長
日本臨床コーチング研究会 会長
(一財)財団法人生涯学習開発財団認定コーチ
(2014年12月受講開始)

※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

糖尿病センターの医師である松本一成さん。コーチングを学び、患者やスタッフへの主体性を引き出すコーチングを取り入れることで起きた具体的な成果をお聞きしました。

コーチング・プログラムを受講するきっかけは?

医師として一生懸命に指導するけど、糖尿病患者がやる気を示してくれず困っていました。まさに患者さんより医師の私だけが熱くなっている状態でした。

たまたまコーチングの本に出会い取り組み始めましたが、自己流だけだとコーチングとして不十分なこともあるかもしれないので体系的に学びたいと思いました。数名のコーチング医療の先生からコーチ・エィのプログラムに参加していると聞き、オンラインでなら続けられるかもしれないと思い受講を決めました。

ご自身や患者様の具体的な変化は?

オンラインクラスに参加して最初に驚いたのは、社会人として参加している方々の言葉使いがきれいだったことです。

通常ではなかなか接点のない他の職業の方とつながったときに「医師として自分のコミュニケーションの取り方は横柄だったかもしれない」と気づかされました。

クラスの内容はどれも役に立つことばかりでしたが、一番印象に残っているのは「アカウンタビリティ」(※)のクラスです。私は患者さんに「何とかしてあげよう」とは思っていましたが、相手の可能性を信じて、自ら伸びていくようアカウンタビリティを求めてないことに気付きました。それからは患者さんの自主的な発言を求めるために、落ち着いて最後まで話を聴く、答えを急がない、本質は何だろうと思って聴くようになりました。すると患者さんも大きく変わりました。

以前は糖尿病数値データが悪くなると「すみません」と謝るだけだった患者さんが、今では「今回悪くなったけど、次はこうしてみます」と次にむけての自分の行動を自主的に話すようになりました。当センターでは千数百名の糖尿病患者を診ていますが、糖尿病検査指標ヘモグロビンA1Cの数値が平均0.5%下がりました。これは大きな改善と言えます。患者さんそれぞれが「運動増やす」「食事を計る」「血糖値を計る」「薬の飲み忘れない」といった一人一人違った問題に自ら取り組むようになったことで、糖尿病コントロールを上手にできるようになった結果です。

※ 「主体的に自ら進んで仕事や事業の責任を引き受けていく意識」や「一人ひとりが、自分の責任において考え、行動を起こす意識」のこと

医療スタッフや組織の変化は?

私がスタッフの話を聴くことで、スタッフも患者さんへの話の聴き方が変わり、患者さんの考え方を理解できるようになり、否定せずに聴く文化が出来上がってきました。

以前は、看護師も栄養士も患者によくなって欲しいと思うが故に、お説教になったり、求められないアドバイスをしたりして、患者さんに「余計なお世話」と身構えさせていたことがありました。今では「何かお困りのことはないですか?」と問いかけ、患者さんの話を聴くように変わりました。

以前糖尿病センターは仕事量が多く、残業も多かったため、周囲から「糖尿病センターにいったら大変だ」とよくない評判がありました。看護師には退職者も出ていました。この状態は問題だと思いスタッフにコーチングで何度も話しを聴き、「どうしたいのか?」「理想は?」と問いかけているうちに、勤務体制の課題がわかり、外来を午前に集約し、定時退社できるよう改革を進めました。以前には、過労のあまり退職希望者が出たこともありましたが、現在ではそのようなことはなくなりました。出産育児で休暇に入るスタッフも「子育てが終わったらこの職場に戻してください」と言ってくれるようになりました。

感想やこれからコーチングを学ぶ方へのメッセージ

コーチングが職員のやりがいにつながってくると医療の質は向上し、安心・安全につながります。コーチングをやってよかったと感じています。

コーチングを学ぶだけでなく、実践することがこのコーチング・プログラムのいいところです。参加したら実践せざるを得ないシステムなので身に付きやすいです。

それが患者さんやスタッフにも福音をもたらします。現在の医療は一人のブラックジャックのような医師で成り立つものではなく、チーム医療で成り立つものです。チームを育てることにコーチングはとても役に立つのでコーチング学び実践する医療関係者が増えるといいと思っています。


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