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受講生の声

鈴木 太一さん

教員がコーチングを身に着ける意味とは?

鈴木 太一 さん

学校法人芝学園 音楽科教諭
(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ
(2014年1月受講開始)

※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

音楽科教諭として吹奏楽部の顧問をしている鈴木さん。教員がコーチングを身に着けるとどんな成果があるのか?教員がコーチングを身に着ける意味とは?をインタビューしました。

コーチ・エィ アカデミア受講のきっかけ

教員になりたての20代前半のころ、私は吹奏楽部の指導を任されました。生徒主体でやっていた部活なのですが、意気込んで新任の私が入っていったら上手くいかないことの連続。当時、生徒や保護者とのコミュニケーションに悩んでいました。先輩の先生に相談しても「君のやり方がダメなんだよ」とアドバイスをもらうだけで、自分にはしっくりきません。そこで教員向けのコーチング研修会に参加して、コーチングを体験してみました。そのなかで、自分のことを受け止めてもらえることの気持ち良さや、コーチから言われた「鈴木先生頑張っているんですね」という言葉に胸が熱くなり、本格的に学んで生徒たちの想いに応えたいと思い、コーチ・エィ アカデミアの受講を決めました。

"確認作業"の質問から、"考える力を養うため"の質問にシフト

一番変わったことは、日常の生徒への問いかけの仕方です。以前の私は「勉強した?」、「いいえ」、「やりなさいよ」という、単なる確認作業のための質問を繰り返していました。コーチングを学んでからは、「今日はどんなことを学んだの?」「どうやってやったの?」「なんでそれを選んだの?」という、生徒自身の考える力を養うための質問に変わっています。普段からYes or Noで答えられないオープンクエスチョンをすることで、学習の場以外でも、自分で考える力を高めようと工夫しています。

また教師として、以前はティーチングメインの「こちらから教える、与える」という考えで生徒と接していましたが、相手自身に任せ、考えさせ、成長させる、というコーチングも組み合わせて使っていくことが大事だというマインドに変わりました。

自分の演奏に自信が持てない生徒が一歩踏み出す

当時の吹奏楽部の生徒に、音大を目指している生徒がいました。その生徒はトランペットが専門だったのですが、よく、寂しげな表情でぼそぼそと「自分が何を表現したいか分からない...」と言っていました。そこで私はいろいろな角度から問いかけて、演奏について一緒に考えていきました。

具体的に、「どんな音色を出したい?」「この演奏の一番の山になる場所はどこ?」「この演奏に物語をつけるとしたら、どんな物語を描きたい?」「その物語には、どんな音が似合うだろう?」と、演奏全体を物語として見立て、各パートで切り分けるのではなく、全体から自分が出したい音色を探していきました。

すると驚くことに、音の命中率が上がり、どんどん演奏に表情がついていくような、説得力のある演奏に変わっていきました。

その生徒は音楽系の大学に合格したのですが、先生の関わりってどうだった?と聞いてみたことがあります。生徒は、「今まで先生に言われたポイントだけ練習してきたから、どんな演奏がしたいか聞かれるレッスンは初めてだった。最初は考えるのが大変だったけど、自分が表現したいことがだんだん分かってきて、先生と話すのも演奏するのも楽しかった」と言ってくれました。

自分がやりたいと思ったこと、出したいと思った音色の演奏をサポートする。私にとっても貴重な体験になりました。

生徒と先生の関係を変えることが、生徒と保護者の関係を変えることに繋がる

お母さんと毎日取っ組み合いのけんかをしている生徒がいました。私は、多感で難しい時期にいる彼をサポートしたいと思って、気持ちを整理するために継続的に時間を取って話を聞くことにしました。最初のうちは話すこと自体が難しくとも、だんだん回数を重ねていくごとに自分のことを話してくれて、あるとき「先生、僕山登りが好きなんです」と山登りについて語ってくれました。

もともと野球部にいたのですが、それがきっかけでワンゲル部に転部をして、さらには自分が好きな山登りをお母さんと一緒にすることで、関係性をいい方向に自ら変えていったのです。遅刻しがちな子だったのですがそれもなくなり、私が促しながらではありますが自ら勉強するようにもなりました。ワンゲル部への転部を自分で決めたこと、好きなことを通してお母さんと話すことを決めたことなど、少し前まで取っ組み合いでけんかをしていたと思えないほど、彼自身の主体性に変化があったのではないかと感じています。

教員がコーチングを学ぶ意味とは

正論や説得だけでは人は変われない。変わったとしても一瞬で、また元に戻ってしまう。なぜならそれは「言われてやっている」にすぎないからだと思います。

人が本当に変わろうと思うのは、自分自身の本音に気づいたときだろうと思うのです。コーチングによって生徒たちの本音を引き出し、本質的な行動変容を促すことによって、私たち教員の時間の使い方は大きく変えられるのではないでしょうか。コーチングは私たち自身の人生のためにも、学び甲斐が大いにあるものだと確信しています。

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