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受講生の声

横尾 英孝さん

コーチング型マネジメント実践による組織活性化

横尾 英孝 さん

千葉大学医学部附属病院 総合医療教育研修センター
特任助教(兼任・アテンディング)、糖尿病・代謝・内分泌内科
(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ
(2014年9月受講開始)

※内容および所属・役職等は取材当時のものを掲載しています。

糖尿病の領域では、患者との関わりにコーチングが使われ始めている中、糖尿病の「チーム医療」の領域でコーチングを活用された横尾英孝医師。他職種のメンバーとの関わりにおいて、どのような変化や成果があったのか。また、(一財)生涯学習開発財団認定プロフェッショナル認定コーチの資格も取得され、今後の医療分野での、コーチングの可能性について伺いました。

糖尿病診療に何か新しい取り組みを

2014年4月に大学医局の人事で、地域医療の核となる基幹病院へ赴任しました。業務は糖尿病患者の診療がメインだったのですが、そこで目にしたのは大学病院をはるかに上回る4000人以上の患者数でした。さらに、健康に対する意識や医療資源が地域全体で非常に不足しており、糖尿病の状態や合併症が悪化した患者が次々と押し寄せる日々で、診療は困難を極めました。この状況の打開に悩んだときに、他病院の医局同門の先生が糖尿病患者にコーチングを応用していること、企業の人材養成でコーチングがよく使われていることを同期に聞き、2人で受講することを決めました。まずは、自分自身や糖尿病診療に関わる機会の多い医療スタッフから変えていく方針としました。

「周囲に起きた変化」と「自分が変えたこと」

まず驚いたのが、コーチングをした医療スタッフの身振りや手振りが増え、よく話すようになったことです。会議でもアイディアがたくさん出て、患者会や地元の産業祭りでのブース展示、資格取得のための勉強会などのチーム活動が非常に活発になりました。

自分自身の変化としては、相手をよく観察して承認やフィードバックを意識して行うようになりました。なぜそれが重要なのかを「理論」を学び、職場で実践することでその効果を体感し、同期やトレーニングのオンラインクラスで他の参加者に共有するという繰り返しが効果的でした。また、「視点を変える」など、目的を持った質問を習得し、相手が「ハッ」となったときは嬉しさを感じています。メールの返信も早くなり、業務の効率も上がりました。コミュニケーションの未完了によって相互に及ぼしていた悪影響が軽減したからだと思います。

医他職種間の関係性の変化

コーチングによる成果は、外見だけではわかりづらいところもあるため、事前と事後で自己評価による7段階のアンケートをとりました。メンバー間や個人と組織の絆・愛着を表すエンゲージメントでは、「自分の仕事は評価されている」が4.0→4.9点、「チームに貢献するために必要なものをよく理解している」が3.9→4.7点、「効果的に仕事を成し遂げるためのツールを所持している」が3.4→4.7点と上昇していました(p>0.05)。また、医師、看護師、薬剤師、栄養士といった医療職同士の距離感が縮まり、「他職種との関わりは自分のスキルアップや目標達成に影響を与えている」という項目も5.2→5.8点になっていました(p>0.05)。学会発表も増え、チームとしての活動は病院から表彰を受けるに至りました。

今後の医療におけるコーチングの可能性

コーチングによる自分と周囲への影響は予想以上のものでした。いくら専門職がいても、自分の枠の中だけで個々に仕事をしているだけでは限界があります。スタッフ1人1人が明確な目標を持ち、モチベーションやパフォーマンスを最大限に引き上げ、チーム一丸となって業務を行えば、長期的には周辺地域一帯の糖尿病診療レベルが向上し、医療費の高騰や患者のクオリティ・オブ・ライフの改善に大きく貢献できるのではないでしょうか。また、コーチングはさまざまな医療現場で活かせると思います。医療現場は専門家の集合体であり、人間が相手で不確実性の伴う分野を扱うため、高度なコミュニケーション力や問題解決能力が要求されるからです。今後は大学病院で医学生や研修医の育成にもコーチングを取り入れていこうと考えています。

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