ルールのないコミュニケーション

2017.1.12

コミュニケーションが難しい一つの理由は、コミュニケーションに関するルールの確認がないまま、コミュニケーションが実際に交わされている点にあります。

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唯一、目上の人には敬語を使うといった、上下間の了解事項があるだけで、相手が話しているときには口をはさまない、結論の先取りはしない、自分の考えを言っても仕返しはされない、などのルールはありません。コミュニケーションとはかくあるべきという表面的な理解は一応あるものの、決してそこに同意があるわけではありません。

「口の利き方を知らない」
「長幼の序というものを知らない」
「言葉遣いに気をつけろ」
「誰に向かってしゃべっているんだ」
「いいから、黙って聞け」
「仕事もろくにできないくせに」
など、上司はいざとなれば、伝家の宝刀を抜きます。もっとも、最近はそれもあまり通用しません。

さて、本来コミュニケーションは、年齢や役割を超えて、対等な立場で交わされるものなのですが、それについても同意はありません。会話が混乱するのは、話の内容や意見の食い違いにあるのではなく、コミュニケーションに対する理解、そのルールに対する真の同意がない点にあります。

たとえば、
コミュニケーションを交渉の手段として考える
コミュニケーションを介してアイディアを創出する
コミュニケーションを交わして、協力・協調関係をつくりだす
などのように、どのような目的をコミュニケーションにもたせるかによっても、意味は違ってきます。

そうなると、普段からコミュニケーションをどのようにとらえているかについて、まず、コミュニケーションを交わす必要があります。そのことを「メタ・コミュニケーション」と言います。

コミュニケーション全般について、また、今ここで交わしているコミュニケーションが、お互いにどのような影響を与えているかについて、それをテーマに、コミュニケーションを交わすのです。そのことを、会議やちょっとしたミーティングで話題にするだけで、コミュニケーションは変わります。

出典:伊藤守「部長講座」日経産業新聞


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